鴨肉を春キャベツで巻いたアミューズを傍らに、1983年ヴィンテージのシャンパーニュ・ダンブロワーズで乾杯。ほのかな熟成香を漂わせながらも泡はあくまで快活に立ち上り、鴨の肉々しい旨みを優しく包み込みます。
昨夜は地蔵通りにある
レストラン・ヒロトさんにて、
島根県産のイノシシを使ったコース料理に、ロワールのヴァン・ナチュールを合わせる会に参加させていただきました。真空パックに詰められた仔猪には、誰が捕獲して誰が捌いたかということまで書かれています。
二皿目からいよいよイノシシの登場です。一日熟成と三日熟成のイノシシのパテを食べ比べつつ、爽やかな赤キャベツの酢漬けでお口直し。ワインはティエリー・ピュズラのKO・クロ・ド・ラ・ロッシュ2006が供され、マルベックらしいカリッとしたスパイシーさがパテによく合いました。
味に深みがあって、輪郭がくっきりと浮かびあがった印象だったのは三日熟成のパテ。最初はイノシシの癖のある匂いを想像していたのですが、いい意味で見事に裏切られました。ほんのりと軽い塩気とスパイシーさが、次のグラス一杯を誘うようです。
三皿目はまとだいとスズキを用いたブランダードに、レ・ヴァン・コンテのアルゴテスト2006を。いわゆる典型的なアリゴテとは一線を画した、濃厚な香りと充実した余韻。魚の塩気とワインのミネラル・果実味が一体となって、口中でぐんぐん膨らみます。
四皿目のイノシシのソーセージには唸らされました。やはり猪肉独特の匂いは少ないのですが、噛んだ瞬間に微かに香る野生的な旨みがたまりません。これにクロード・クルトワのロモランタンを合わせると、ソーセージの塩気とワインのミネラル分が足元でしっかりと絡みつき、地を這うような、どっしりとした味の広がりを見せてくれました。
最後はイノシシのグリエ・カンパリ風味のソースに春野菜を添えたものを。グリエによる香ばしさと、ソースのほろ苦さ、微かな甘みが渾然一体となって、表面的には淡白なイノシシ肉をぐいぐい後押ししてくれます。合わせたワインはクルトワ親子の息子、ジュリアン・クルトワ作になるフラン・ド・ピエ2004。最初ガメイらしい果実香が顔を出したかと思いきや、じわじわと、ヴィーニュ・フランセーズならではの奥深いミネラル感が現れ出てきて、充実した余韻へと続きます。
美味しいイノシシを食べながら飲む、個性豊かなロワールのヴァン・ナチュール。コンディションのいい繊細なワインがもつ
旨みの広がりと、新鮮な食材がもっているキリッとした骨格、
エネルギーみたいなものが見事に調和したような気がしました。
島根県産イノシシ料理を食べに、ぜひ
レストラン・ヒロトさんへ行かれてみてはいかがでしょうか。
ワインとの胸躍るような組み合わせも楽しめます!