2006年5月に自然派のワイン生産者を訪ねてフランスを訪問しました。
アルザスのクリスチャン・ビネールを訪れセラーを見ていたらたくさんのラピエールのワインが。
理由を聞くとお互いのワインができると送りあって飲んで参考にしているとのこと。
当時は「自然派ワイン」とゆうとコマーシャルなレベルの低いワインと見られることが多く歯がゆい思いをたくさんしたものですが、実際の生産の現場は産地は離れていても共通の生産方法、哲学を共有するもの同士美味しいワインの生産を目指し、作り手同士が情報と自らのワインを交換し合いながらリアルタイムで変化し、向上していることを実感したものです。そのサロンのような作り手の結びつきの中で最も重要で、実際の中心人物がマルセル・ラピエールでした。
「自然派ワイン」、「ヴァンナチュール」っていわれてもピンとこないですよね。
「ナチュラルワイン」と言われたら少しはイメージが湧きませんか?
ビネールと話をしているとしきりにナチュラルワインとゆう言葉を使い、自然酵母とSO2の有無について語り
実際にワインをブラインドテイスティングし、これはそうか、そうでないかを確かめてきます。
このあたりで僕は自然派ワインとゆうものの香味特性を具体的なものとして判別するようになりました。
自然派ワインと呼ばれるワインは共通する特性があるとともにクォリティの振れ幅も広くクリティカルな選択が必要ですがマルセル・ラピエールのワインはカテゴリーが必要ないほどに良い意味で「中庸」です。
カジュアルラインに限っていえばですが。なにも考えずただただ美味しいワインを飲み続けることができそうなワイン。そんな感じ。
ワインの基本的で、本来的なあるべきスタイル。
彼のモルゴン、キュヴェ・マルセルになると俄然レベルが変わります。
ブルゴーニュの村名クラスのピノノワールに引けをとる事のない完熟したガメイのもつ旨味、多様な自然酵母による複雑な風味、SO2を使わないことによる生き生きとした果実味。僕らのボジョレー=ガメイのイメージはどこから来ているのか?大半は悪しきボジョレーヌーヴォーのイメージからきているのではないのか?マルセル・ラピエールはボジョレーのAOCが持つディスアドバンテージをリスクの多いヴァン・ナチュールの方法論を使って解放する戦いを真摯に引き受けた作り手だったのではないでしょうか?AOCを拠り所にするフランスのワイン生産にとって将来問題になることは、今ボジョレーが直面している問題が先取りしているのだと思います。そいてマルセル・ラピエールはその回答をもっている生産者なのでしょう。
そんな彼のボジョレーヌーヴォーはとてもわかりやすくその年のビンテージを教えてくれますが
悩ましいことに今年は2つのバージョンが存在します。
今まで国内で流通していた軽いマセラシオンで軽くてチャーミングな味わいの野村ユニソンが輸入するもの。
そして新たにテラヴェールが輸入するCHカンボン(ラピエールの奥様所有の畑のブドウからつくられる)
こちらはしっかりとマセラシオンしたフランス国内流通バージョン。味わいはしっかり目。
この二つを飲み比べ、さらにマルセル・ラピエールの畑のブドウと醸造所でつくるフィリップ・パカレのボジョレーヌーヴォーを飲み比べを今年はじっくりしたいと思っています。
作り手、畑、2009年とゆうビンテージ、ボジョレー、ヴァンナチュールと思いを巡らせながら。